こんにちは、ハルです。
今回は資産運用のお話です。
今回はタイトルの通りですが
「配当落ちで配当分の株価下落は本当に起こるのか?」
という誰しもが一度は考える素朴な疑問を実際に検証してみた、という記事になります。
なおこの記事は最低限、資産運用に関しての知識がある方向けに書いています。本当に右も左も分からないという方向けではありませんので申し訳ございませんがご了承ください。
配当落ちとは?
まずは一番重要な概念である「配当落ち」について。
ここではSMBC日興証券の説明を引用します。
配当落ち・権利落ち (はいとうおち・けんりおち)
配当落ちとは、その期の配当を受ける権利が権利確定日の翌営業日をもってなくなることをいいます。また、権利が受けられない分、株価が安くなったことをいう場合もあります。
SMBC日興証券
たとえば、1株1,000円の株が配当を1株当たり5円出すとします。配当がもらえる権利があるのとないのでは、理論的には5円の差が出ます。これが配当落ちです。この例では、配当落ち後、5円の配当分だけ株価が下がり、理論上では株価は995円になります。ただし、株価はその他の要因でも日々値動きしていますので、理論通り株価が変化するとは限りません。
株というものは、ある期日に持っていると配当金としてお金を貰えます。
この配当金は企業からすると手痛い出費にほかならず、企業の持っている資産が減少することになります。
要するに配当を出した企業は配当分だけ企業価値が下がるため、株価も下がる傾向がある、というお話です。
理論上は配当分と同じだけ株価が下がるため、権利落ちを跨いだ場合の損益はプラスマイナス0。税金分で損をする計算です。
本当でしょうか?
今回はこの点を検証してみます。
権利付き最終日→権利落ち日の騰落率を検証
検証には実際の株価のデータを使います。
と言っても何か証券会社の高度なソフトやスクリーニングツールを使ったわけではなく、権利付き最終日と権利落ち日の実際の株価を私がチェックしてぽちぽち手打ちしただけです。誤植がある場合がございます。先に謝っておきます。
さて結果一覧がこちら!!!
これから私が述べることはすべてこの表に書いてあります。
そのため知識のある方はこの表を見ただけで私の言いたいことをすべて完璧に理解して下さると思いますが、
「ということだ。後は言わなくても分かるね?」とばかりにこれで記事を終えるのはさすがにどうかと思うので、一応説明をしていきます。
ちなみにこの表に出てきている銘柄に一体どういう共通点があるか、勘のいいひとは気付くはずニャ……
君のような勘のいいネコは嫌いだよ
一応表の見方のご説明と記事の主題
さすがに表が細かすぎて見ずらいので一部だけ抜粋・改行の上で、表の見方の例をご紹介します。冗長なので知識のある方は読み飛ばしてください。
ここでは例として皆さんお馴染み日本航空JAL(9201)と全日空ANA(9202)の例をご紹介します。
まず項目を左から順に。
優待価値:100株あたりの優待価値です。
優待利回り:権利付き最終日終値における100株あたりの投資金額に対する株主優待の割合のことです。
例えばANAの例だと、最終日終値が1株3,076円で、100株で307,600円。
307,600円の投資で約1,000円の株主優待を貰えるので、(1000/(3076*100))=0.00325ということで、優待利回りは0.33%となります。
予想配当金:100株あたりの予想配当金です。今回は実際に入った配当金を入力したので実際の配当金です。
配当利回り:権利付き最終日終値における100株あたりの投資金額に対する配当金の割合のことです。上の優待利回りと同じ考え方です。
例えばJALの場合だと同様に100株253,900円の投資で4,000円の配当金を貰えるので、(4000/253900)=0.01575となり、配当利回りは1.58%となります。
総合利回り:優待利回りと配当利回りの和です。ANAの場合だと中間配当を実施していないため、優待利回り=総合利回りになっています。
下の段に行きまして
終値-始値騰落率:権利付き最終日の終値-権利落ち日の始値の騰落率です。
終値-終値騰落率:権利付き最終日の終値-権利落ち日の終値の騰落率です。
始値-始値騰落率:権利付き最終日の始値-権利落ち日の始値の騰落率です。
始値-終値騰落率:権利付き最終日の始値-権利落ち日の終値の騰落率です。
つまりこの記事では「権利付き最終日」と「権利落ち日」の2日だけしか考慮しないという事です。2日間の始値と終値の組み合わせなので、全部で4つのパターンの騰落率を計算しています。
例えばJALの例だと、最終日終値が2,539円。落ち日始値が2,524円。15円の下落は最終日終値ベースで-0.59%の騰落率になる、という意味合いです。((2539-2524)/2539=0.00590)
配当利回り騰落率:配当利回りを考慮した騰落率です。
総合利回り騰落率:優待と配当の利回りを考慮した騰落率です。
例えばJALの例だと、優待利回りが0.39%、配当利回りが1.58%なので総合利回りは1.97%。
で、終値-始値の騰落率は-0.59%ですが、総合利回りは1.97%なので、株価の値動きと利回りを総合した騰落率は+1.38%となります。
あれ?プラス、ニャ……
お気づきになられましたか
この「総合利回りを加味した騰落率」が本当にマイナスになるのか?という点の検証が、この記事の主題です。ちなみにJALの場合だと、前述の通りプラスになります。
つまり最終日の引けで買って権利落ち日の寄り付きで売るだけで1晩寝ているだけでお金が1.38%増えた、と言うことを意味します。こんなことが許されていいのか!
まずはざっくり全銘柄をグラフで概観
上で述べたような計算を、全銘柄で行った結果の表は上に乗せた通りですが、さすがに文字と数字だけでは見にくいのでまずはざっくり、グラフを使って概観をご紹介します。
上の散布図は今回検証した56銘柄の最終日終値-権利落ち日始値の株価の騰落率を示したものです。
横軸は証券コードなので深い意味はありません。
縦軸が騰落率です。中央が0%。0%という事は、終値と始値で差が無かったという事です。
y値が正の値になっている銘柄は配当落ちで値上がりした銘柄。y値が負の値になっている銘柄は配当落ちで値下がりした銘柄ということになります。
まずはざっとグラフを見て貰うと分かる通り、中心の0%よりも下にプロットされている銘柄が多いと思います。つまり配当落ちで株価が下がったという事です。ただし証券コード8000番台以降はあろうことか、権利落ちしたにもかかわらず逆に値上がりしている銘柄も結構あると分かります。
既にこの時点で、結論は出ました。
予想:「配当落ちで配当分の株価下落が起こる」
↓
結果:「落ちる銘柄もあれば逆に上がる銘柄もある」
ということで、巷で言われている「配当落ち=必ず株価下落」が真っ赤な嘘だと判明しました。
ここで記事を終わっても良いのですが、もう一歩先に進めてみましょう。
つまり「配当落ち=株価下落」は確実なものではないと分かったけれども
「では優待と配当を加味した場合、どうなる?」
というお話です。
優待と配当の利回りを加味した配当落ちの考察
前項では「配当落ちにも拘らず値上がりした銘柄も結構ある」ということが分かりました。つまり1晩寝ているだけでお金が増えたという事です。
さて、ここで大事なことがあります。
配当落ちしたという事は「株主優待と配当金を貰う権利もゲットできた」という衝撃の事実です。
つまりですよ。寝て起きただけで値上がりしたのでお金が増えただけでなく、優待と配当金までゲットできると。なにこのボーナスステージ。こんなことが許されていいのか!!
この項では優待と配当金を加味した総合利回りを考慮した配当落ち騰落率を検証していきます。
結果がこちら!!
先ほどの散布図と見比べて貰うと明らかなとおり、全体的にy値がぐっと上昇しています。
今回検証した56銘柄中、マイナス圏に沈んだのはわずか9銘柄だけで、
残りの47銘柄は1晩寝て起きただけでボロ儲けだったと判明しました。利益が出る確率、84%です。こんなことが許されていいのか!!!
なんだこの結果は……
ちなみに一番悪い結果になったのはアドバンスクリエイト(8798)の-3.37%という結果になりました。
逆に一番良い結果になったのは富士急行(9010)の+4.45%ということになりました。富士急行に至っては中間配当を出していないにも拘らず、寄り付きで前日比+3.37%の騰落率でした。
(中間配当を出していないが故の上昇とも言えます。)
終値と始値、どこで買うのが一番良かった?
もう1歩進めます。
上のグラフは「最終日の終値」と「権利落ち日の始値」を見たものでした。
しかし前述した通り、4パターンの買い方売り方があります。そこで4パターンのうちどれが一番リターンの多い取引だったかを見ていきます。
結果は次の通り。
さすがに4つもグラフを出して比較するのは逆に分かりにくいため、ここは数字だけご紹介します。
組み合わせ | 総合利回りを加味した 56銘柄の騰落率の相加平均 |
---|---|
終値-始値 | +1.03 % |
終値-終値 | +1.36% |
始値-始値 | +1.98% |
始値-終値 | +2.31% |
数字として出して見ると明らかです。下に行くほど数字が大きくなっています。
結論:「権利付き最終日の始値」-「権利落ち日の終値」の組み合わせが一番リターンが良かった
つまり一番長く株を所有した組み合わせのほうがリターンが良かったという事になりました。
ここで大事なことは2点。
ということです。
衝撃的な結果ではないでしょうか。
配当落ちを跨ぐのがこわい場合 最終日と落ち日だけで取引する手法
以上の検証から、何とも信じられない結果が出てしまいました。損をするのが難しい状態でした。
しかしですね。
やはり権利付き最終日から権利落ち日まで銘柄を持ち越すのは怖いよ
と。
そこで考えました。
「権利付き最終日だけ」「権利落ち日だけ」で取引する手法はどうだろうと。
つまりですね。
というような浅はかな考えに基づく取引手法です。
これは何も私が考えただけではなく昔からよく言われている手法の一つです。
これを検証してみましょう。
検証しましょうといっても全ては最初に載せた画像に乗っています。ここではその部分だけ抜粋します。
上の画像は
・左が権利付き最終日の始値で100株を買い、終値で売った場合の損益。
・右が権利落ち日の始値で100株を買い、終値で売った場合の損益。
を表しています。
まあ各銘柄でプラスになるものもあればマイナスになるものもあるのですが、全銘柄の平均を取ると両者ともプラスです。
権利付き最終日なら1銘柄あたり2,083円。権利落ち日なら1銘柄あたり972円の利益が出ることが分かります。
まあ全体的に見ると、権利付き最終日のほうが安全そうな香りはします。
56銘柄中、引けにかけて値下がりしたのは10銘柄だけでした。82%の成功率です。
こ、こんな馬鹿ニャ……
こんなことが許されていいのか……
権利落ち日の値動きは予想しにくいので注意
上の結果からも、権利落ち日よりも権利付き最終日のほうがリターンが良いことが分かりました。
というのも権利落ち日の値動きは少々読みにくい点があります。2024年12月27日(金)の権利落ち日の値動きを、いくつかの銘柄を例に出してご紹介します。
ケーキでおなじみ不二家(2211)の場合だと、寄付きが一番株価が高く、後は底値圏に沈み続けています。典型的な寄り天と言った様相。
サッポロホールディングス(2501)の場合だと、不二家とは逆で完全な寄り底です。
寄付きでは前日終値よりも下がっていますがその後ガンガン ズンズン グイグイ 上昇して、終値では前日比+117円で引けました。寄り付きで売った人は台パンものでした。
ビーグリー(3981)の例では、寄付きはほぼ前日比プラマイ0でしたが、後場から急に下げ始めて結局前日比140円で引けました。-7.63%の猛烈な下げでした。寄り付きで売った人はほっと一安心。
このように権利落ち日の値動きは予想不可能です。権利付き最終日のほうが手堅いというのは数字からも分かるかと思います。
結論:どうやってもかなり利益が出たという結果に
ここまでをまとめます。
という信じがたい結果になりました。
(ちなみにこの記事では税金は考慮していません。実際には20.315%の重税が課されます)
以上。今回はここまでにします。
今回は資産運用のお話でした。「配当落ちで株価は本当に下がるのか?」という素朴な疑問を検証してみたわけですが、結論としては信じられない結果となりました。
あくまで2024年9月のみの結果という事ですが、私の予想をはるかに上回る高いリターンを叩きだしていて、正直かなりびっくりしました。
繰り返しますがこれは勧誘その他ではありません。あくまで1つの厳然たる事実として、皆様の何かの参考になれば幸いでございます。
それではまた。ご覧いただきありがとうございました!
黙って買っておけば山ほどちゅ~るが買えたのにニャ
何をやってるニャ
いや言うのは簡単だけど実際にやるとなると……
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