こんにちは、ハルでございます。
今回も一連のIntel第13世代・第14世代CPUのクラッシュ不具合に関する記事です。
これまでの経緯等は以下の記事をご覧ください。
インテル製CPUの不具合問題に関する一連の記事
2024年の時系列と記事まとめ【まとめ記事なので初めての場合はこちらからご覧ください】
Intel CPUのクラッシュ不具合はKなしi5-14400 i5-13400も対象
i5-14400・13400が不良品かステッピングを調べて確かめる方法
修正パッチの提供が始まるもOSのライセンス消失の危険あり
クラッシュ不具合についてドスパラに問い合わせた結果
Core i5-13400(F)で不具合・不安定化の報告が発生
ドスパラの対応方針が発表されました【9/4更新】
BTOメーカー11社の対応まとめ【9/13更新】
インテル公式発表 Core i5-13400(F),14400(F)はセーフ
i5-13400,14400への対応に関してドスパラに問い合わせた結果
【アイドル状態でも壊れる】新BIOSアップデート(3回目)が発表 ←いまここ
ドスパラの実店舗でi5のBIOSアップデートについて聞いてきた
「クラッシュ不具合は完全に解決した」インテルの主張
結局i5-13400・i5-14400ユーザーはBIOS更新をするべきか否か
i5-13500で不具合発生 インテルはBIOS更新を求める
改めてi5のBIOS更新をドスパラに問い合わせた結果
このCPUクラッシュ不具合・不安定化問題に関して、
「不具合問題の根本的な原因を緩和する」
という名目で、新しいBIOSアップデートが発表されました。今回はこの内容についてご紹介していきます。
(直すとは言っていない)(最終的解決とも言っていない)(緩和するだけ)
根本対策用の新BIOSアップデート(マイクロコード0x12B)が発表
第13世代、14世代のインテル製CPUのクラッシュ不具合・不安定化問題に関して、根本対策用の新BIOSアップデート(マイクロコード0x12B)が発表されました。ソースは以下。
Intel Core 13th and 14th Gen Desktop Instability Root Cause Update
今回はこのソースから該当部分を引用し、日本語訳したものを紹介します。
Intel® has identified four (4) operating scenarios that can lead to Vmin shift in affected processors:
- Motherboard power delivery settings exceeding Intel power guidance.
a. Mitigation: Intel® Default Settings recommendations for Intel® Core™ 13th and 14th Gen desktop processors.- eTVB Microcode algorithm which was allowing Intel® Core™ 13th and 14th Gen i9 desktop processors to operate at higher performance states even at high temperatures.
a. Mitigation: microcode 0x125 (June 2024) addresses eTVB algorithm issue.- Microcode SVID algorithm requesting high voltages at a frequency and duration which can cause Vmin shift.
a. Mitigation: microcode 0x129 (August 2024) addresses high voltages requested by the processor.
インテルはこれまで4つの対応を行ってきたそうです。
① はマザーボードメーカーに対して「オラ!インテル推奨設定にしろよ」と通知したもの。
(最初は「マザーボード側が勝手にインテルの推奨設定を逸脱したせいで壊れた(# ゚Д゚)」とか難癖付けてたよねインテル。」
②はCPUが高温状態なのにさらに高パフォーマンスで動かしてCPUがブチ壊れる不具合。2024 年 6 月のマイクロコード「0x125」で緩和済み(完全対策ではない)
③は高電圧や高い動作周波数をCPUに要求してしまいCPUがブチ壊れる不具合。2024年8月のマイクロコード「0x129」で緩和済み(完全対策ではない)
この③のマイクロコード「0x129」に関しては私の以前の記事でもご紹介した修正パッチのお話です。(↓)
まあ、こういう風に時系列にまとめてもらうとこちらとしても分かりやすいですが。
そして4つ目の対応が今回のアップデートになります。
4.Microcode and BIOS code requesting elevated core voltages which can cause Vmin shift especially during periods of idle and/or light activity.
Mitigation: Intel® is releasing microcode 0x12B, which encompasses 0x125 and 0x129 microcode updates, and addresses elevated voltage requests by the processor during idle and/or light activity periods.
なおVminというのは最小動作電圧のことで、文字通り「動作させるために必要な最小の電圧」です。
Vminシフトというのは「本来最小限の電圧であるVminが上昇することでCPUやシステム全体が不安定化する」という事だと考えられます。
いや……というか………えっ!?
アイドル時でも不安定化不具合が発生する!?
これまで一連の不具合が起こる状況や場面というのは
「重いゲームをプレイした時にクラッシュする」
「負荷をかけた場面でブルースクリーンが発生する」
など、基本的にはPCに負荷をかけた場面で過電流や過電圧などでCPUの劣化が進み、CPUのダイが物理的に壊れてしまうことで発生する、とされていました。
だから高い性能を誇るハイクラス・ハイエンドのi7・i9でこの問題が起こるとされていました。i3・i5やノートPC用のCPUは電力設計が低いから安心安全だと。
それが今回のインテルの発表では、しれっと
「特にアイドル時やアクティビティが軽いときにVmin シフトを引き起こす 」
(意味:アイドル状態でも謎の過電圧・過電流が生じる)
と言っています。
アイドル状態とは待機状態のことで、何も作業をしていない状態です。
サラっと言ってますがこれは初めて公表される情報だと思います。
しかも、超絶重大な情報だと思います。
負荷かけなくても壊れるんならもう根本的な部分がダメなんじゃん
この発表によって
「i7やi9は電力(電圧)が高いしパフォーマンスも高いから、その分壊れやすい」
という前提が崩れてしまったように思います。
つまり、相対的にi7やi9よりも性能が低いi5シリーズでも不具合が起こりえる可能性が高まったと言えると思います。
アイドル状態でも壊れるならもうTDPが低電力とか高電力とか関係ないやん…。
百歩譲って全力運転の状態で壊れるならまだ分かるんですよ。エンジンのオーバーブーストとか。火事場の馬鹿力とか。オーバーブーストしたらエンジンは焼けるし、火事場の馬鹿力出した後は骨折したりするし。
でも静かに寝ている時でも壊れるんなら、それは虚弱体質か、もう病気なんですよ……。
保証延長対象外のi5に関して何も言わなくなった
Intel® reaffirms that both Intel® Core™ 13th and 14th Gen mobile processors and future client product families – including the codename Lunar Lake and Arrow Lake families – are unaffected by the Vmin Shift Instability issue.
以前、インテルは
Kなしのi5 (i5-13400、i5-14400など)とノートPC用のCPUは不具合起こらないよ~セーフだよ~
と言いました。
それが今回の発表では
「モバイル用のCPUに関しては影響がないことを再確認しています」
とトーンダウンしました。
都合が悪いのか、i5に関してはインテルは何も言わなくなってしまいました。
For all Intel® Core™ 13th/14th Gen desktop processor users: the 0x12B microcode update must be loaded via BIOS update and has been distributed to system and motherboard manufacturers to incorporate into their BIOS.
インテルの公式表現も
13/14 世代デスクトップ プロセッサーをお使いのすべてのユーザーの皆様へ
です。
保証を延長した(つまりインテルが不具合を公式に認めた)i7やi9のユーザーへ。ではありません。すべてのユーザーへ、です。
当然この中にはi3・i5も入っています。もう終わりだよこの世代。
BIOSアップデートはまた数週間かかる
9月25日に今回の新BIOSアップデートがリリースされましたが、マザーボードメーカーが検証・対応して、実際にユーザー側でアップデートできる状態になるにはまた数週間かかります。
つまりお金を払ってBTOメーカーにBIOSアップデートして貰った人はまたやり直しです。ドスパラで言うと3,300円がパァです。
ここまでBIOSアップデートは6月、8月、9月と今年だけでもう3回目です。正直こんなに頻繁にBIOSアップデートをやるならwindowsのOSアップデートで一緒に流して貰いたい。
前にも言いましたがBIOSアップデートはPC文鎮化の危険がある結構リスクの高い作業なので、そんな作業を年に3回もユーザーに強いるのはどうなの、という思いが強くあります。
BIOSアップデート 最新版_改
BIOSアップデート 最終版_ver1.2
BIOSアップデート 最終版_改2
BIOSアップデート 最終版_改_最新_コピー
【最新】BIOSアップデート_修正済み_
BIOSアップデート 最終版_改3_コピー
現状、冗談ではなく↑のような状態なのですが……。一体いつになったら最終版になるの。
今回のBIOSアップデートは完全解決でも完治でもない
ここまでお読みいただいた通り、今回のBIOSアップデートは
一連の不具合問題の完全解決策でも無ければ完治でもありません。
むしろ「アイドル状態でも壊れる」という最悪の新事象が判明したことにより、モバイル用CPUは100%セーフだといったのが怪しくなり、i5シリーズに関しては言及すらなくなってしまいました。
ネットニュースでは今回の発表を受けて「根治」「最終的解決」「完全解決」「調査終了」などと述べられていますが、
ソースを読むとそんなことはどこにも書いてありません。
「Root Cause Update(根本原因のアップデート)」とインテルが表現したのをソースも読まずに適当に書いたようにしか思えません。
そもそもインテル自身も「Mitigation:緩和措置」「追加の緩和策と次のステップについて」と表現していて、まだ次があると言っていますが……。権威あるネットニュースが誤情報を書くのはどうなんでしょう。
ということで今回はここまでにします。
前回、インテルが「i5はセーフだよ~」と発表した時に「本当か?」と疑いの目を向けておりましたが、今回「アイドル状態でも壊れる」という新たな最悪の不具合が発覚し、i5が本当にセーフなのかどうかも怪しくなりつつあります。
インテル…………。
いい加減にして。本気で。
ご覧いただきありがとうございました。
インテル製CPUの不具合問題に関する一連の記事
2024年の時系列と記事まとめ【まとめ記事なので初めての場合はこちらからご覧ください】
Intel CPUのクラッシュ不具合はKなしi5-14400 i5-13400も対象
i5-14400・13400が不良品かステッピングを調べて確かめる方法
修正パッチの提供が始まるもOSのライセンス消失の危険あり
クラッシュ不具合についてドスパラに問い合わせた結果
Core i5-13400(F)で不具合・不安定化の報告が発生
ドスパラの対応方針が発表されました【9/4更新】
BTOメーカー11社の対応まとめ【9/13更新】
インテル公式発表 Core i5-13400(F),14400(F)はセーフ
i5-13400,14400への対応に関してドスパラに問い合わせた結果
【アイドル状態でも壊れる】新BIOSアップデート(3回目)が発表 ←いまここ
ドスパラの実店舗でi5のBIOSアップデートについて聞いてきた
「クラッシュ不具合は完全に解決した」インテルの主張
結局i5-13400・i5-14400ユーザーはBIOS更新をするべきか否か
i5-13500で不具合発生 インテルはBIOS更新を求める
改めてi5のBIOS更新をドスパラに問い合わせた結果
コメント
素人がこの状態でBIOSアップデートしても大丈夫だと思いますか?
文鎮化するリスクがあるとのことで、今回のように頻繁にアップデートをする必要があるようだったら、まだ手を出さないほうが良いのではないか、と思ってしまいます。
私自身PCを購入したのが8月頭なので、なるべく長く使いたいとは思いますが、自力でパッチを充てるのも怖いですし、かといて、BTOメーカに修理を出すにも、手間も時間も、お金もかかってしまいます。
どうすればよいのか、確実な答えがあるわけではないので、主さんの意見をお聞かせいただきたいです。
もももさん
初めまして。コメントありがとうございます。
お問い合わせの件ですが、私ももももさんと同じく(ド)素人なのでそこは大前提としてよろしくお願いします。
さてBIOSアップデートですが、まずはもももさんの使われているPCの「BTOメーカーがどこか」「CPUが何か」が大事かなと思います。
一応ドスパラの想定で書きますが、
① 不具合対象のi7・i9の場合
→かなり危険があるのでBIOSアップデートをおすすめします。i7・i9の場合、ドスパラからかなり手厚い保証をして貰えるので、ドスパラにBIOS更新を依頼したほうが無難かなと思います。ドスパラウェブサイトから修理の申し込み→集荷→検査ののち再発送という流れになります。費用は送料も込みで無料です。
ただし現在不具合が起こっていない場合の予防措置は有償対応になるので、「どことなく動作が不安定。一度検査して欲しい」と言う名目で検査して貰って、「検査しても異常はなかったですがBIOSは更新しておきました」という流れにしてもらうのがいいかなと。ドスパラは一般不良で来た商品は一応BIOS更新して返却すると言っています。
この辺の流れについては以下の記事をご覧いただければ少しは参考になると思います。
https://halu-journey.com/intel-cpu-defect-inquiry2/
② 不具合対象外のi5の場合
→私と同じ状況なので要検討なのですが、私はドスパラの店舗に持ち込んでBIOSをやって貰おうかなと思っています。
ドスパラの場合はサポートセンターにBIOS更新を依頼しても拒否されますが、店舗に持ち込んで依頼する場合は有償(3,300円)ですがBIOS更新作業はやってもらえるとのこと。3,300円で10万円以上するPCが救われて、心の安定を買えるなら高くは無いかなと。
ただし最近3回目のBIOSアップデート(0x12Bというマイクロコード)が発表されました。これが流通して店舗でアップデートして貰えるようになるまではまだ一ヶ月ほどかかると思うので、一ヶ月は様子見かなと…。インテルは0x12Bが最終パッチで、これで問題は解決した、というつもりのようです。
店舗で聞いてきた記事は以下をご覧ください。
https://halu-journey.com/real-dospara-store/
お近くに店舗がない場合は、やむを得ない手段として手動BIOSアップデートをするかしないか、またはi5は大丈夫と信じてそのままで居るか……これは難しい判断になります。
なおユーザー自らが行う手動BIOSアップデートに関してですが、確かにリスクがあるのは事実で、BIOS更新中に何らかの事故で電源が落ちてしまうとPCが破壊されてしまうのは確かなのですが、実際問題は手動アップデートを自分でしているユーザーもたくさんいるのも事実です。
普通にやればまあ大丈夫……程度のリスクかと思います。なのでi7・i9の場合は良く調べて貰ってから、手動アップデートも十分選択肢になると思います。
しかし手動BIOSアップデート後にBTOメーカーの保証対象で居られるかは要注意で、i5の場合は保証対象外になってしまいます。i7・i9の場合は保証対象で居られるという情報もありますが、一応btoメーカーに確認されるのが良いかと思います。
まだPCを買われてすぐということで、早速保証対象になってしまうのはもったいないので、私としては面倒ですがメーカーに送って更新して貰うのがベターかなとは感じます。
データを消したりなど非常に手間がかかりますが、幸い今ならまだ傷は浅いかなと。2年くらいPCを使い込んでから壊れられるとさらに傷が広がって面倒さが増すので、可能なら今のうちにやったほうがいいかなと思います。
繰り返しになりますがメーカーと、i7・i9なのか・i5なのかで変わってくるのでそこをお知らせ頂ければと思います。
すみませんこの件に関して追記なのですが、今日読者の方とお話している中で
「ドスパラ店舗でやってもらえるBIOS更新はmsiオリジナルのBIOSを入れられる可能性」について思い当たりました。
詳しくは
https://halu-journey.com/what-should-we-do/
という記事を書いてみましたが、正直私は自分でBIOS更新するほうに傾きつつあります……。
取り急ぎご連絡をさせていただきました。